五十人くらいの応募者が一割の五人程度にしぼり込まれてくると、いわゆる実力伯仲、甲乙つけがたい状況になってくる。企業も採用の判断に迷い出すのがこの頃だ。こうしたときの判定の基準は、概して「彼、感じがよかったから、どうだろうね」といったフィーリングの問題になってくるケースが多い。わずかでもいい印象を与えられた人がリードし、勝ちを制するわけだ。私の体験だが、こんな例がある。午前中に面接を終え、やはり五人から二人にしぼり込むのに午後から会議室で相談の最中だった。人事課の女性から「本日面接にいらしたAさんから『面接をしていただいてありがとうございました』とお礼の電話がありました」と報告が来たことがある。それまで渋面をつくって、あれこれと悩んでいた会議室の雰囲気が、そのとき、にわかにホッとやわらぎ、次いで「お礼の電話なんてなかなかできないもんだが、感心だね」といった声があがった。それを潮に、しばし話題はAさんの面接での印象に移り、けっきょく、最後には全員一致でAさんの採用が決まってしまった。五人のなかで、とくに目立ったタイプではなかったのだから、電話があきらかに功を奏したことになるわけだ。
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